令和元年度女性活躍推進事業「社会で輝き続けるためのスキルアップセミナー」

第1回 人生100年時代―成長し続ける私①「自信が持てる!『考え抜くチカラ』講座」

<開催レポート>

令和2年1月25日(土)13時30分~16時

 

(リード)

未来を切り拓く力を身に付けるためのスキルアップセミナー第1回目は、人、企業、社会の変化を多面的に追及されている“変革屋”、株式会社チェンジウェーブ代表取締役社長の佐々木裕子さんを講師に迎え、人生100年時代に向けて、変化の時代の中で自ら考え目標を達成するチカラについて、ワークを交えて楽しく学びました。

  

●人生は長く、変化はますます急激に

今から50年前、1970年頃の日本の人口構造は綺麗なピラミッド型でしたが、2050年の予測が示す通り、日本は猛スピードで超高齢社会に突入しつつあります。医療はますます発達し、男女ともに人生は本当に長くなっています。同時に起きているのが、「1年前は考

古学」と言えるほどの世の中の急激な変化です。例えば、様々な製品が5000万人のユーザーを獲得するのにかかった時間を調べると、飛行機は68年かかったのに対し、ポケモンGOはたったの19日です。また、変化の別の例として労働時間に目を向けると、1996年に日本はOECD内で断トツのトップでしたが、現在ではOECD平均を完全に下回っています。こうしたデータからも、急激なスピードで既存の常識や前提が変わっている事が見えてきます。

 

●「大航海時代」の到来

急激に世の中の変化が進むと、これまでの「こういうルートをこう進むと安泰」というような常識や定説のようなものが一切通用しなくなります。一方で、変化は速く、人生は長くなっているため、失敗しても何度でもやり直しが可能な世の中になってきました。例えて言えば、しっかりルートを辿って山登りする時代から、新たに世界を切り拓く大航海時代がやってくるのです。状況は刻々と変化し、予想もつきません。どこまで行っても、どの方向にも舵を切ってもよい時代になるのです。

今日は「考える」に重点を置いたセミナーですが、まず何が起きているかをしっかり「観る」。観たらその情報をもとに「考える」。考えたら「動く」。それを繰り返していくのが、大航海時代を生き抜くことになるかと思います。

 

●人は見たいものしか見えない―脳のバイアスを意識して「観る」

 

<「観る」に関する実験>

風景写真(街なかを流れる川、そこにかかる大きな橋等…)を10秒見て、何が見えたかを発表…橋、川、建物、人etc.(そのあと、佐々木さんから橋の上にダイニングテーブルが大きく写っていたことが指摘される)。

 

今まで大勢の方に見ていただきましたが、この風景写真の中、ダイニングテーブルが見えた方はほんのわずかです。こんなに真ん中に写っているにもかかわらず、その存在に気づかない、見えていない。なぜでしょう?それは脳が勝手に“何を認識するか”を選択しているからなのです。コンピューター等と比べてみれば脳が処理できる情報量は非常に限られていて、基本、脳は“スルー”します。皆さんが今体験したのは、「今までの経験値にないものは、見ようとしない限り見ることができない」という脳の仕組みなのです。こういう脳の仕組みをバイアスと言いますが、人間であれば誰でも持っている脳の省力モード機能です。したがって、「観る」ためには、人間にはそういう機能があることを自覚することが重要です。「きちんと見ているようで、見えていないものがあるかもしれない」と自覚することによって、初めて「観る」ことができるのです。

 

<IAT(Implicit Association Test):概念と概念がどれぐらいパターン認識して紐付けられているかを試すテスト>

画面に連続して表示される単語が、「男性」か「女性」どちらに紐付けられるか、次に「家族」か「キャリア」のどちらに紐付けられるかを素早く答える。さらに、「男性もしくはキャリア」か「女性もしくは家族」のどちらに紐付けられるか、最後に「男性もしくは家族」か「女性もしくはキャリア」という組み合わせで、どちらに紐付けられるかを答える。

 

最後の「男性もしくは家族」か「女性もしくはキャリア」の組み合わせが難しいと思った方は、無意識に“男性➡仕事”、“女性➡家庭”というパターン認識をしているということです。ちなみに“男性と仕事”、“女性と家庭”が紐付くのは、日本人だけではなく世界中の人々にその傾向がみられるそうです。

 

では、ここで皆さんに1つ質問です。皆さんはどこかの会社のマネージャーという設定です。部下に1歳の子供がいる優秀な男性社員がいて、行ってもらいたい海外出張がある場合、打診しますか?次に、これが1歳の子供がいる優秀な女性社員だとしたらどうでしょう。果たして躊躇なく打診しますか?

“部下は女性”と聞いただけで、打診が難しいと思ってしまった方、あなたの脳では無意識バイアスが“正常に”働いています。まさに“正常に“です。そのこと自体は、極めてナチュラルなことですが、このような性別の無意識バイアスの存在は社会の中にあって、女性、男性それぞれ対して様々な場面で人生の選択肢、機会を奪うことにつながります。無意識バイアスは、大体3歳から5歳くらいまでに構築され、一旦構築されると完全に払拭するのは難しいと言われています。したがって、このようなバイアスが自分や自分の周りにあることを意識するのが非常に重要です。意識することで自身の中にあるバイアスをセルフ・コントロールできるようになります。

 

●クリティカルシンキング―自分の意志で明確に目標設定

「大航海時代」のポイント、2つ目はいよいよ「考える」です。「大航海時代」、何のために考えるのかと言えば、自分の意志で次の目的地を選択するためです。それができないと、海でただ浮いている、あるいは周りに巻き込まれ流されていくことになります。目的地は人生のビジョンというような大きなものでなくても良くて、何でもかまいません。大事なことは、「これをやりたい」ときちんと目標設定をすることです。とはいうものの、目標設定にマニュアルはなく、自分の頭で考えなければならないので、これが非常に難しい。自分の頭で考えるという経験が浅い、あるいは“正解”が明確に見えない時には、クリティカルシンキングという技術が必要になります。クリティカルシンキングにより、限られた情報と限られた時間の中できちんと目標設定し、自分が今解決したいと思っていることが解決できるようになります。さらに自分に経験値がないことについても、自分の頭で考え、論理的な判断ができ、その判断を他の人に短い時間で分かりやすく伝えることができます。クリティカルシンキングは、目指すものを達成するために自分の頭で考えて行動し、周りを動かすための考える技術なのです。

クリティカルに考える力の第一歩は、どこに、いつまでに行きたいかが自分の中で明確なこと。考える力のほぼ8割が、「何を目指すか」で決まります。その際、常に意識しておくと良いのは「なんで?」「ホント?」「具体的には?」という3つの問いかけです。これを覚えておいて、繰り返し自分自身に投げかけることを習慣づけてみて下さい。

 

<ペアワーク>

ペアを組み、それぞれこれから「成し遂げたい」と思っていることを紙に書く。「なぜ?」、「何ができたらゴール?」、「いつまでに?」等、できる限り具体的に設定する。その後、書いた内容をお互いに発表し合う。

 

アウトプットの際は聞く側の姿勢が非常に重要です。人の話を聞くには、いくつか段階があります。レベル1は、人の話を聞いていても、常に自分に意識のある段階。レベル2は、自分のこと一切合切横に置き、相手の思いをとにかく知りたいという気持ちで聞く。今回はレベル2で聞いて下さい。もし迷ったら、先ほどの3つの質問「なんで?」、「ホント?」、「具体的には?」を使います。

 

●多くのことは、やってみなければ分からない

では最後は「動く」です。皆さん、ご自身の経験を振り返ってみて下さい。このようなセミナーに出て、何かを決意し、次の日に実行し始めましたという経験のある方は意外と少ないのではないでしょうか。実はこれが人間の本質です。ということは、「やってみる・行動に移してみる」だけで、何もやらなかった人とは大きく差が付くと言えますね。中身が何であれ、多くのことはやってみないと分かりません。動いた人は動いた分だけ知識も経験も増えます。実際、動くことに関してリスクはそんなにはないものです。ですから決意したのに動かないというのは、本当にもったいない。動くためのポイントは1週間以内に動くこと。逆に言うと1週間以内にできるような「人から話を聞く」「ネットで資料請求をする」等、できるだけハードルの低いことから始めることが肝心です。さらに言うと、そのプランの実行に他人を巻き込んでおくと、“後に引けなく”なります。「〇〇します!」と周囲に宣言した場合、途中で投げ出しにくくなりますよね。

実際に「動いてみた」事例として、かつて弊社がコンサルとして関わったケースの1つ、キリン株式会社の営業職20代女性社員5人で始めた「なりキリンママ実験」というプロジェクトを紹介したいと思います。従来女性が営業職を長く勤めるのは難しいと思われていたビール会社で、未婚の彼女たちが子育て中のママになるシミュレーションを行い、様々な縛り(保育園への送迎、子供の急な発熱による呼び出し等)の中で、見事営業成績をあげ、最終的にはプロジェクト自体を全社的な戦略にまで発展させたというものです。若手女性社員たちが結束して、それまでの常識を打ち破り突き抜けたのは、まさに快挙!このエピソードは「とにかく、やってみるって大事だな」ということを感じさせてくれますし、今でも彼女たちの奮闘する姿を思い出し元気をもらっています。

 

●「考える」力は人間が本来持つ力

最後に、以前インタビューさせていただいたことがある、東京大学で21世紀スキルを研究していらっしゃった故三宅なほみ先生の言葉を紹介します。先生が仰っていたのは、21世紀スキルは特別に教えるものではない。考えるとか、やってみるということは太古の時代から人類が持っている力なので、身に付けるというよりも、錆びついた本来の力を解放することだということです。ポジティブに考えると、21世紀は意外と生きやすい世界で、考えること自体はむしろ自由になっていくのかもしれません。つまり「みんな好き勝手にに機関銃をぶっ放してみよう」ということです。

これからも超高齢社会は進行していきますが、2050年くらいに、「案外、日本は面白くなってきたね」という風になっていたとしたら…その時は、私たちが自由に生きている姿を背中で見せられた時かなと思っています。本日お話しした内容が、少しでも、そういった希望のある世界に向かうきっかけになったら幸いです。

ご清聴ありがとうございました。

 

―参加者の声―

・自分で考え、切り拓いていく力があれば21世紀は悪い時代ではないという言葉が印象に残った。また参加者の方とのワークも楽しかった。

・決めたことは大体実行しない、1週間以内に実行しないことは実行しない。その通りだと思いました。

・変化の激しい大航海時代をしっかり歩んでいけるよう、意識を高め、楽しんで変化にチャレンジしていきたいと思いました。

・考えることについての固定概念の影響が面白かった。自分自身の行動もかなり影響を受けていると思った。

・ところどころに参加者のワークも取り入れられて、2時間半あっという間でした。

(アンケートより一部抜粋)

 

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