「パートナーシップセミナー(第1回)」開催レポート

令和元年度女性活躍推進事業 「パートナーシップセミナー」

第1回「白河桃子さんと考える女性向けセミナー ふたりの幸せのための戦略的パートナーシップ」

<開催レポート>

令和元年10月20日(日)13時30分~16時

専業主婦、共働きのワーキングマザー、それぞれの立場で感じる家事や育児分担に関するもやもや感、割り切れなさはどこから来るのでしょうか?今回は、相模女子大学客員教授、少子化ジャーナリストの白河桃子さんを講師に迎えて、夫婦や結婚の形を様々な角度から考えてみました。

 

第1部 :「『逃げ恥』にみる結婚の経済学セミナー

 

ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」は、主婦の無償労働を初めて価値化したということでターニングポイントとなるドラマでした。このドラマを元にミクロエコノミストの是枝俊悟さんと白河さんが共著した「逃げ恥にみる結婚の経済学」の資料を元に、まずはこの主婦の無償労働に注目してお話をします

 

●「好きの搾取」をされていませんか -

「逃げ恥」では、過去の結婚のイメージとは全く異なる「共同経営型結婚」が提示されています。そこでは家事労働の価値もきちんと算出されていました。

みくりの給料(19.4万円)の算出には、「機会費用法」という方法が使われています。この方法は、家事をしていた時間、もし外で働いていたら得られたであろう収入から専業主婦の給料を計算するという考え方で、家事の時間と機会費用(1時間当たりの時給)をかけて計算されています。実際、専業主婦である妻に、この給料を支払う場合、必要な夫の年収は、税込みで約600万円。夫の収入が600万円未満で、専業主婦が全ての家事を引き受けていた場合、「好きの搾取」をされていることになります。

さらに未就学児のいる専業主婦の場合、労働時間は週61.7時間。会社で働く場合、法定労働時間が週40時間ですので、残業は月換算で80時間以上と同じぐらいになります。過労死並みに働いているのが今のワンオペ育児の現状です。共働きの場合でも、妻は、自分の収入の方が低い場合、当たり前のように家事、育児を全部引き受けているケースがよくありますが、計算してみると、実はもっと夫が家事を負担するべき夫婦が多いのです。

 

 

●働き方改革は暮らし方改革

過去のセミナーである方が「うちの夫は死んだものと思っています」と言うと、多くの女性がそれに賛同しました。理由を聞くと、平日は子供の起きている時間には帰ってこられない。生きていると思うとつい期待してつらいので、期待しないようにパパは死んだものと思っているとのことでした。これは本当に大問題です。男性の育児参加は、最初が肝心で、育児というスタートアップ事業を夫婦でいっしょに始められれば、以後、父親としての関わりが全く違ってきます。そのためにも男性の育休義務化が急務だと思っています。

幸いなことに、今ようやく働き方改革が法律として施行されました。働き方改革はただ時短をせよということではなくて、長時間労働は価値があるという考え方を完全にアンインストールする意識転換が重要です。かつて、野田聖子さんも「女性活躍からフェアネスへ」、「女性は活躍したいのではない、単にフェアに働きたいだけなのです」とおっしゃっていましたが、まさにこのフェアに働くという視点で、長時間労働のような、全体の働き方が男性向けに隔たっていないか、正面から取り組むことが大切です。

ある調査によると、多くのワーキングマザーにキャリアの行き詰まりを感じさせる上司の行動は「長時間労働を評価する」ことだそうです。働き方改革でこの意識はかなり変わってきています。長時間労働の評価がなくなれば、ワーキングマザーの最大のハードルが取れることになります。別の調査では、成果を出しているワーキングマザーは、他の社員の負荷、得意な仕事を把握し、適切な人に仕事を頼み、時間内の仕事の効率を高める努力をしています。これはまさにひとり働き方改革と言えるでしょう。ダイバーシティを実現するには、労働時間を短くするだけではなく、テレワークなどの柔軟な働き方を取り入れるなど、まず会社が変わり、働く側も、短時間で結果を出すような働き方にシフトしていく必要があります。

男女雇用機会均等法ができた頃は、日本もまだ成長期で作れば作っただけ物が売れ、長時間労働した方が勝つというのが企業戦略
よって、長時間労働できる女性であれば男性と同等に認められるという時代でした。

その後、時短制度、女性の育休取得を認める企業が増えましたが、それでも、単に女性に優しくしただけで、本当の男女平等、フェアと言える段階ではありませんでした。
しかし今や産業構造は転換し、多様性が強みになる時代に変わり、ここでようやく男女ともに働き方を変えることが必要になったのです。

今は1日5時間でも、あるいは週3日でも正社員というような働き方も出てきています。評価は時間の長さから、時間当たりの成果に変わらなければなりません。全ての社員が働きたい働き方をして、それが認められる会社こそが成果を出せる会社です。企業や社会も変化していますので、今後はいかに男女が、働く時間、家事や育児の時間、最終的には賃金面で、平等に近づいていくかポイントです。

 

●女性が働く意味

女性が働く意味は明らかに変わってきています。男性が稼ぎやすい仕事が少なくなり、女性も男性も同じようにできる仕事が増え、その気になれば男性と同じくらいのお金を稼ぐことができます。

また雇用が不安定で流動化する時代では、夫婦共働きによる家計の安定性の向上が求められます。日本の人口構造も変わり、ダイバーシティもますます重要になっています。ダイバーシティにはいろいろな意味がありますが、日本の場合、一番活用されていない要素の一つが女性の力です。女性がいることとイノベーションには明らかな相関があるという研究結果も出ています。

さらに、2060年、労働力は半減すると言われています。今、本当に女性の活躍が重要になる中で、長時間労働是正は必須の課題です。今回、初めて罰則付きの法律ができたことが、働き方改革による大きな成果だったと思います。長時間労働に上限を設けて、柔軟な働き方が認められ、時間当たりの生産性がアップすれば、男女ともに労働人口も増え、イノベーションも起こり、企業の競争力もアップします。それには長時間労働が基本というこれまでの社会を強い意志を持って変えていくことが重要です。

 

●必要なのは家庭における男性の意識改革

非常に残念なことに、残業なしの男性より60時間残業する女性の方が子供との交流時間は長いという調査結果があります。つまり男性は時間があっても子供との時間を増やしているわけではないのです。その時間を何に使っているかというと、テレビ・新聞の時間が増えています。つまり働き方改革で時間だけを増やしても、意識が変わらないとだめなのです。では意識を変えるのは誰でしょう。やはり家庭における一番の意識改革者は妻です。

さらに男性育休義務化のような強い法整備で意識改革を促すことも必要で、まさにこれが働き方改革と連動する暮らし方改革になるのかなと思って活動しています。

 

夫の変化をどう促すかということに関連して、私の恩師の中央大学ビジネススクールの佐藤博樹教授の素晴らしいお言葉があるので、紹介させてください。

「これからの時代、変化対応行動、変化に対応できることがすごく重要です。皆さん自身も皆さんのパートナーも、変化に対応できることが求められます。それには3つの重要なポイントがあります。

第一に、常に知的好奇心を持ち続けること。次に学び続ける力。時間は限られているとは思いますが、学ぶ場所はいくらでもあります。3つ目は、チャレンジ力。これは男性女性、全く関係ありません。この力を得るためには、どうしたら良いか、この力を持っている人たちを調査した結果があります。彼らは、まず変化する職場で仕事をしていた。次に自分と考え方が違う人と一緒に仕事をした。最後に、仕事以外の役割を持っている人です。」

皆さんは既にお母さんという役割を持っています。あと、PTA、地域社会に参加しているかもしれません。では皆さんのパートナーはいかがですか?子育てに参加することは、多様な役割をするという意味では非常にプラスになるのです。そこを皆さんのパートナーにもぜひ伝えてください。

 

第2部 : 結婚2.0ワークショップ

①グループで定期・不定期の家事の分担状況を図で可視化するワークに挑戦し、その後、将来的にどう変えていきたいかを話し合い、内容をシェアしていただきました。

②3年後の理想の夫婦関係について考え、グループで話し合っていただきました。

参加者からは、

・今後はやるべきことを可視化して、パートナーに分かってもらう工夫をするべき。

・得意不得意は自分もあるので、受け入れる落としどころを見つけていきたい。

といった意見が聞かれたほか、育休中で女性に偏った分担率を盛り返す方法など、様々な話題で盛り上がりました。白河さんからも、定期的に家から離れた場所で会議をする、妻の復職前に夫が育休を取って、そこで偏った分担率を戻すといった、有意義なアドバイスをいただきました。

 

 - 質疑応答 -

Q. 働き方改革は良いのですが、流行だから乗っている気もして、何が本当に幸せなのかわからなくなる時があります。

A. 本当の幸せは自分にしかわかりません。自分でデザインするのが自分の幸せだと思います。ただ、こういうセミナーやっていて、まずはしっかり自分を幸せにしてほしいと常に思います。私が常に女性の経済力が大事だと言っているのは、経済力があれば自分のかじ取りできる部分が多くなるからです。そのかじをしっかり握って、良い航海をしてほしいと強く思います。働き方改革も一時のブームかもしれませんが、私はこうした強いワードは、利用するのが勝ちと思います。皆さんが自分の大切な時間を一日何時間使ってどのくらいお金を稼いで、どんな風に生きていきたいかということを考える一つの大きなチャンスが来ていると思ってください。

 

―参加者の声―

・白河さんがとてもリアルな家庭の状況を分析されていて、いろいろな委員会などの場でさんのような方がご発言してくださっていることに心強さ、希望を感じました。

・家事が大変と思って感情的になっていましたが、可視化することで自分自身をいろいろ振り返ることができました。

・「好きの搾取」をデータで見られて、共働き夫婦の家事育児の割合に驚いた。

・ワークは正直嫌だったのですが、手を動かしてみてわかることがある、と実感。やってよかったと思いました。

(アンケートより一部抜粋)

 

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