「起業スタートセミナー」開催レポート(第1回)

 

平成30年度起業スタートセミナー

第1回『副業からはじめるローリスク起業 ~あなたの理想を数値で見える化します~』

開催レポート

平成31年1月19日(土)13時30分~16時30分

 

起業してみたいけれど何から始めればいいかわからない、不安がある…。

そんなあなたのスタートを後押しします!

たくさんのご応募をいただいた起業スタートセミナー(第1回)は、ファイナンシャルプランナーで「ハートマネー」代表の氏家祥美さんをお招きしました。

―自己紹介―

もともとは起業は考えていませんでした。就職して2年で結婚退職。専業主婦となり日々の生活の中でお金の知識の必要性を感じ、ファイナンシャルプランナー(以下FP)の勉強を始めました。FPの資格を取得し、インターネットで知り合った仲間4名と2005年にFP会社を設立。その時の気持ちは、「理想の職場がなければ、自分で作ってしまえばいい。今は稼ぎがあるわけでもないし、少しでも稼げたらラッキー!」という思いでした。

その後、「もう少し家庭に重きを置きたい」と、2010年に個人事業としてFP事務所ハートマネーを設立し

ました。

 

第1部「副業とローリスク起業の関係」

―最近の起業・副業の動向―

世の中では、残業を減らす、働き方を効率的にするなど「働き方改革」の流れがあります。また、「IT化・AIの発展」により事務職が減ってきたなど、職業環境の変化があります。そういった変化の中で、個人への影響はどうでしょうか。ゆっくりできる、習い事や新しいことにチャレンジができるなど「時間ができた」という人がいる一方で、収入減や将来への不安を感じている人もいます。そして、そのような個人を企業側はどう捉えているかというと、副業を許可して従業員の能力向上につなげていくという企業もあれば、本業への支障や情報漏えいへの不安から、副業に懸念を示すところもあります。

会社員を続けながら副業をするという場合は、ご自分の会社の副業規定がどのようになっているか確認して、本業に支障をきたさないようお気を付けください。現在はインターネットの普及、シェアオフィス(注1)、資本金制度の撤廃(注2)などの後押しがあって、起業がしやすくなってきています。

 

―ローリスク起業とはー

ローリスク起業の目的は、「好きなことで自分が必要とする収入を確実に得ること」です。どのような

分野で起業するかについて、「好き」、「需要」、「実績」の3つが重なる部分で起業するのが良いと思います。「好き」は、ゆるい感じがするかもしれませんが、好きなことは24時間考えていませんか?特別な労力を

かけなくても、好きなことだと知らず知らずのうちに情報を集めていたりいます。「好き」という気持ちはと

てもパワーがあります。例えば、メイクが好きな方はコスメの情報をたくさん持っていたり、料理が好きな方

はレパートリーがたくさんあるなど、「覚えなきゃ」、「調べなきゃ」と肩肘を張らなくても情報を得ているこ

とが多いのではないでしょうか。

もちろん、ただ、「好き」だけではなかなかビジネスになりません。そこで「需要」の部分が大事になりま

す。例えば、「勉強を教えることが好きだから塾を開こう」と思っても、住んでいる地域が高齢者ばかりで子供というマーケットがなければ安定収入を得ることは難しいと思います。けれども、「じゃあ諦めるか」でなく、少し自分に問いかけてみましょう。

・子供にこだわりがない場合→高齢者を対象に生涯学習として教える場を作る

・子供にこだわりたいけれども住んでいる地域を変えることはできない場合→オンラインなどで家庭教師をしたり、ビデオ教材のようなものを作成して販売する

自分の譲れない条件や得意なものを見つけ、そのマーケット(必要とする人)はどこにあるかを考える必要があります。

そして、「実績」の部分ですが、それはマーケットに自分を選んでもらうポイントになります。上記の例で、オンラインでの家庭教師をしようと決めた場合、同質のことをやっている方がたくさんいます。そのたくさんの中から選ばれるための「実績」が必要となってきます。分かりやすい実績は数字です。例えば、2000人の相談に乗った、東大に〇〇人合格させたというものですが、自分のサービスを受けた方や商品を利用してくれた方の感想も立派な実績になります。

次に、ローリスク起業の方法についてです。ローリスク起業とはリスクに対処しながら確実に育てる起業スタイルですが、二つの側面があります。一つ目は「コストを抑える」こと 、二つ目は「家族や周囲に配慮する」ことです。

「コストを抑える」について、1円起業もできて、会社の設立や開業は容易になっています。ですが、すぐに売り上げが上がるわけではありません。宣伝する、ネットワークをつくる、営業に行く、顧客を作るなど、商品を購入してもらうためにはたくさんの下準備が必要で、収入はないけれど出費は多いということになります。その間の金銭面、精神面の体力が非常に重要となってくるため、現在、会社員をされている方は、空いている時間に下準備をするなどして、準備が整ってから開業をする方法をお勧めしています。

また、売り上げは上々なのに事業をストップしなければならない場合もあります。

(1)コストをかけすぎてしまった場合→売り上げが十分ではないうちに設備費に多くのお金をかけて

しまう

(2)黒字倒産の場合(キャッシュフローのストップ)→売り上げ見込みはあっても、購入側が倒産してしまい、収入がなくなって資金繰りができなくなる

開業、会社設立の際はこういった点にもお気を付けください。

「家族や周囲へ配慮する」について、仕事は順調でもプライベートがうまくいかなくなる場合があります。働きすぎて体調を崩す、家族との関係が悪化するなどです。自分一人の夢として自分だけで仕事を考えるのでなく、家族も巻き込んで向き合っていけると良いと思います。

―副業でローリスク起業をはじめるー

ローリスク起業は、次の3段階を経て開業にいたるのがよいと考えています。(1)給料を得ながら起業準備、(2)コストをかけずに実務経験、(3)週末起業で強みづくりです。独立開業までの目安は丸3年です。

現在仕事をしている方でも、できることはたくさんあります。例えば、起業分野を絞る、知識をつける、商品を磨き上げる、資格を取る、ブログで情報発信をする、人に伝えて反応を見る、仕入れ先を探す、仲間を探す、資金を貯めるなどです。「今、何ができるかな?」と考えて、動き出してみましょう!

 

第2部「起業イメージを数字で見える化する」

―起業テーマの絞り方―

皆さんの中には、起業に関心はあるがテーマが決まっていない方が多数いらっしゃいました。そこで、テーマの絞り方について、3つ挙げたいと思います。

(1)「好き」・「好き」でニッチを狙う→ 好き①「カフェ」・好き②「宝塚歌劇団」→宝塚劇場の近くに宝塚ファンのためのカフェを開く

(2)「やりたくないこと」から事業を絞る→ハンドメイドで事業をやりたいが、在庫をかかえるのはいや

だ→オーダーメイド専門にする

(3)「あれもこれもできる」人は、稼げそうな分野で始める→やりたくないことは省き、世の中の需要が

あるもの、市場があり稼げるものに絞る

- ビジネスモデル

次に、ビジネスモデル(注3)を作っていきます。(1)誰の、(2)どんな欲求に、(3)どのように答えるのか、を考えます。

(1)について、一番来てほしい理想の人のことを「ペルソナ」と言いますが、みなさんのペルソナはどういった方でしょうか?男性か女性か、年代、住んでいる地域、所得層はどのくらいか。実績を積んでいけばお客様の層も広がっていきますが、最初のお客様の心をどのようにつかむか、理想のお客様に響く言葉を使っていくことが非常に大切です。

(2)について、どの層のどんな欲求をどのように満たしてあげたいでしょうか?例えば、「コーヒー」というキーワードで起業するとしても、豆を売りたいのか、カフェを作るのか、コーヒーを淹れるノウハウを教えるのか、いろいろな事業の作り方があります。会社のコンセプトを明確にすることが大切です。

(3)について、カフェをやりたいAさんを例として説明します。カフェをやるためには、場所を借りる、 店舗を改装する、スタッフを雇う、ということが必要です。

Aさん「ちょっとまだハードルが高いな…。どうしようかな…」、

どうしてカフェをやりたかったのか考えてみます。

Aさん「お菓子作りも好きで、お菓子とコーヒーを楽しんでもらえる場が作りたかった」

⇒カフェは難しくてもお菓子を作って販売するのはどうでしょうか。

Aさん「それはいいかも。でも、販売ってなると資格とか手続きとか難しそう」

⇒では、お菓子教室から始めてみるのはどうでしょうか。

Aさん「それだったらできるかも。まずはそこから始めて、いずれはカフェを開こう!」

このように小さなことからステップアップをして、起業することも一つの形です。ひとつのキーワードで

大きく始める事も、ハードルを低くして始める事もできます。

 

-いくら稼げばいい?-

起業した場合、売上金額などはどのように考えたらいいのでしょうか。

  1. 手取りでいくら欲しい? 必要最低限の金額/できれば欲しい金額

    →生活費を稼ぎたいという方もいれば、少額稼ぐことができればいいという方もいらっしゃると思います。手取りで欲しい金額はいくらでしょうか。

  2. 必要経費は? 仕入れコスト/事業経費(家賃・人件費・通信費・交通費・消耗品費など)/社会保険料・税金

    →商品を販売する場合は仕入れコストが必要です。自宅開業であれば家賃は要りません。

  3. 必要売上高 (1)欲しい金額+(2)必要経費

例えば、

●完全自宅開業の場合のサービス業(例:ライター/イラストレーターなど)

仕入れや家賃が不要→利益率の目安は60%(必要経費は40%ほど)

・手取り5万円→5万円/0.6=83400円(5万円の手取りを得るためには83400円の売上高が必要)

・手取り20万円→20万円/0.6=334000円(20万円の手取りを得るためには334000円の売上高が必要)

●事務所ありの場合→利益率の目安は40%(必要経費は60%ほど)

・手取り20万円→20万円/0.4=500000円(20万円の手取りを得るためには500000円の売上高が必要)

起業する際の参考にして頂けたらよいと思います。

 

 

第3部「起業に向けた第一歩~夢を実現するために~」(ワールドカフェ形式)

最後に、参加者の皆さんが、ワールドカフェ形式で「明日からできること」のテーマで話し合いました。

「起業を目指している仲間」の話し合いは、とても活発に行われ、「それいいね!」「そういうやりかたもあるんだ」など、各グループで有意義な時間でした。

 
 

●ワールドカフェで出た「明日からできること」の発表

ブログをたちあげる/リサーチをする/セミナーに参加する/起業テーマの差別化(絞っていく)

協力者を探す など

―最後にー

内容盛り沢山な3時間のセミナーの最後は参加者の皆さんそれぞれに「明日からこんなことやります!」宣言を記入していただきました。

「勉強したな」「いいお話聞いたな」で終わらせないために、しっかりと記入いただきました!

―参加者の声―

◆同じような志を持った人と話すことで情報や不安を共有できて有意義だった。

◆起業に向けての必要な準備や、ローリスク起業においても必要なことが分かり、参考になりました。

◆起業したいと考えている方が、たくさんいらっしゃることに大変勇気を持ちました。

◆ざっくりとしたイメージだったものを細かくイメージできるようになった。

◆起業するのに実際どれくらいかかるか、とてもわかりやすく説明していただいてよかった。始めてこのようなセミナーに参加したが、有意義だった。

◆起業のための心構え、ビジネスの設定方法などを考えたことがなかったので勉強になった。

(アンケートより一部抜粋)

 

注1)事務所を所有・賃借することなく事業を行うために、最低限必要となる住所・郵便受取・電話・FAXなど

事務所として必要な機能を提供している、共同オフィス空間を持ったサービスのこと

注2)資本金制度の撤廃:以前株式会社を作るためには資本金一千万円が必要だったが、現在は制度が撤廃されたため、1円

起業も可能となっている。

注3)利益を生み出す製品やサービスに関する事業戦略と収益構造を示す用語

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