令和元年度DV防止講演会(第1回)講演録①

 

東京ウィメンズプラザ令和元年度配偶者暴力(DV)防止講演会(第1回)

これもDV(配偶者暴力)?!“不機嫌”という名の暴力

~家庭内「モラル・ハラスメント」を知り、本当の自分を取り戻す~

 

講演①「見えない暴力」による支配~精神的暴力の正体と脅威~

講 師 髙山直子さん(カウンセラー)

●ハラスメントとは

今回の講演は、応募者数が350名を超えたと聞いています。これは、モラルハラスメントの問題が皆さんの注目を浴びるようになってきたことの象徴だと思います。今日のテーマ「これもDV(配偶者暴力)?!“不機嫌”という名の暴力」は、すごくいいタイトルですね。不機嫌になることとモラルハラスメントは密接につながっているところがあるので、そこを皆さん意識していただけるように講演内容がまとめられています。

私の講演タイトルは『「見えない暴力」による支配~精神的暴力の正体と脅威~』です。モラルハラスメントがいかに怖いものかについてのお話もしなければいけないのですが、何より大事なのは、“モラルハラスメント”状況に、皆さんがいかに早く気づけるかどうかということです。

まず皆さんに理解していただきたいのは、“ハラスメント”という言葉です。ハラスメントを日本語にすると大体“嫌がらせ”と訳されることが多いですが、ハラスメントの動詞形の“ハラス”を英語の辞書で調べると“嫌がらせ”だけでなく、執拗に、継続的に、繰り返しという意味が入っています。日本語でわかりやすく説明すると「執拗に、または継続的に、繰り返し相手を不快にしたり尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり脅威を与える言動や行為」となります。まず、これを頭の中に入れておいてください。

 

次にハラスメントの構造について説明します。ハラスメントの構造の特徴としては、加害者の目的と被害者の目的が全く異なるということがあげられます。加害者の目的は相手に対する支配や攻撃にあり、被害者の目的は意思の疎通、コミュニケーションにあります。さらに、両者の心理も違います。加害をしている側は、相手が何かを言えば言うほど高揚してエスカレートする傾向が強く、一方、被害を受けている側は、相手にわかって欲しいので、あの手この手で意思の疎通を図ろうとします。つまり、被害者が意思の疎通を図ろうと必死になればなるほど、加害者がエスカレートしていくリスクが高くなるということが言えます。そして両者の目的が違う以上、両者がどんなにやり取りをしても交じわることはありません。この構図は、ハラスメントにおいて加害者の目的が支配や攻撃である以上、被害者がどんなに努力をしたとしても、改善できる問題ではない可能性が高いことを示しています。したがって、精神的DVをはじめとするハラスメント問題の多くが“個人の力で何とかできる(解決できる)ものでないことが多い”ということを心に留めておいてください。ハラスメントを受けるだけでも被害者は大きなストレスを抱え、十分傷つきます。その上、自分ではコントロールできないことまで「自分のせいだ」と考えてしまうと、自分で自分を責める思考のスパイラル(悪循環)に陥り、ストレスがさらに増大し、自分で自分を傷つけることになってしまいます。

 

もう1つ大事なことは、誰もが、ハラスメントの加害者にも被害者にもなり得るということです。今日の講演会のテーマが「不機嫌という名の暴力」とあって、ちょっと“ビクっ!”とした方はいませんか。自分がやっていることが、もしかしたらモラハラにあたるのではないかと不安に思ってこの講演会に来た人もいるかもしれません。中には、なぜ自分がハラッサーのターゲットになったのだろうと悩んでいる人もいるかもしれませんが、ハラスメント被害に遭うことは交通事故に遭うようなものです。例えば、結婚相手やおつき合いした相手がたまたまハラッサーだった。或いは転職先の職場でハラスメントが恒常的に起こっていて、根っからのハラッサーでなくても状況や環境によって思わず相手の人格を傷つけるようなことを言ってしまう等、誰もが加害者の心理に陥る可能性があります。私たちは常に、誰しも被害者にも加害者にもなり得ることを意識することが大切です。

ハラッサーの多くは加害性に対する“自覚”が無いため、自身の持つ加害性を認めないケースが多いのも事実です。そして加害者の多くは、それは恋愛のつもりだった、傷つけるつもりはなかった、教育指導のつもりだった等、「○○のつもりだった」とよく言います。しかし、自分は「○○のつもりであって」も、相手はそうは受け取っていないわけですから、実際意思の疎通として成立していません。従って、「○○のつもりだった」ということを理由(免罪符として)に、無自覚なまま相手を繰り返し傷つけている人がハラスメントの加害者になっている可能性が高いといえます。

 

●モラルハラスメントの特徴

モラルハラスメントとは「言葉や態度、身振りや文書などで人格や尊厳を傷つけたり、精神的に追い詰めたり、雰囲気を悪化させる行為」のことです。典型例としての“無視”は、受動的攻撃です。英語では「Passive Aggressive(パッシブ・アグレッシブ)」と言います。また何をしても不利な状態をつくられる“二重基準”や“アメとムチの使い分け”、“しつこさ”等が挙げられます。

モラルハラスメントの“脅威”とは、“操作性”にあります。例えば、相手が“不機嫌”だなと感じたらモラハラ被害に遭っている側は、「とりあえず静かにしておこう」と思ったり、「言いたいことはあるけれど言わないでおこう」と思ったりします。これは相手の言動によって、こちらの心理が“操作”されている状態です。

さらに、モラルハラスメントでは、加害者と被害者を見極めるのが非常に難しいという点も特徴的です。なぜなら、加害者の多くは、ターゲットにした人以外にはとても“いい人”だったりするため、周りの人がその加害性に気づきにくいからです。また、加害者は、自分を被害者のように位置づけ、「お前のせいで」と相手を責め立てることで、本当の被害者の罪悪感や自責の念を誘発するアプローチを繰り返し使うため、実際に被害を受けている側が「自分の側に非がある」と思わされているケースが多いです。このような相手の自責の念や罪悪感を刺激するアプローチを“受動的攻撃”とよびます。

例えば、ため息をつくという行為。ため息をつかれた側(被害者)は「私、何か(あなたの気に障ること)した?!」と、咄嗟にわが身を省みます。ため息をつくという行為自体はその攻撃性は薄く“受け身的”(あたかもため息をついている側が困らされているように見える状態)なのですが、実際には相手を責めたり、不安にさせるという意味で攻撃しています。このようなアプローチを繰り返し使うのがモラルハラッサーの特徴です。

もう一つ、コミュニケーションにおいて“二重基準”などを用いて相手を混乱させるということもあります。以下、例を挙げてみます。

 

男女のカップルが暑い日に部屋でDVDを見ています。男性は暑がりなのでエアコンの温度をいつも低く設定するのですが、女性にとっては寒過ぎたのでとりあえずエアコンを切ることにしました。

もし、その男性がモラルハラッサーだったら切った途端に「何で勝手に切るのだ!」と怒り出します。

1週間後、同じシチュエーションが起こったとします。先週「何で勝手に切るのだ!」と言われた女性は、今回は慎重に、相手の様子を伺いながら「冷房切ってもいい?」と聞きます。すると男性は全く呆れたという様子で「お前は、エアコンを切るかどうかも自分で判断できないのか!」と女性を罵倒します。

 

エアコンのスイッチを自分の判断で切っても、切ってもいいか男性の意向を尋ねても、結果「自分が悪い」と思わされるため、女性は何が正解なのかわからなくなり精神的にひどく混乱することになります。このように被害者が今まで信じていた価値基準が通用しない状況を極めて巧妙に作って、繰り返し混乱させることで被害者の人格を崩壊させるのがモラルハラッサーの特徴です。

●モラハラは魂の殺人

モラハラを定義したマリー=フランス・イルゴイエンヌさんが書いていることですが、モラルハラスメントの加害者の多くは自己愛が強いと言われています。自己愛が強いと自己防衛心が強くなります。多くの人は自分が失敗したり、不都合なことが起きたりしたとき、まずは自分の中で省みることをします。それに比して、自己愛が非常に強い人は自分を守ることに必死なので、「私が悪かった」と考えることは非常に受け入れがたいため、「人や社会、組織のせい」というように責任転嫁をして自分を守っています。

更にマリー=フランス・イルゴイエンヌさんはこんなふうにも言っています。「モラハラは魂の殺人です」と。私もよく「人格が崩壊する」という言葉を使ったりします。

ハラッサーを相手にしていると、自分が信じてきた価値基準が全く通用しないため、ハラスメント被害を受けている側は徐々に何を信じて生きていったらいいかわからなくなり、自分自身を信じることもできなくなり、遂には人格崩壊に至る、つまり魂が死んでしまうというわけです。

 

●受動的攻撃、そしてハラッサーに服従する心理

ここからは、受動的攻撃について詳しくお話ししていきます。例えば、大きな音を立ててドアを閉めるとか、意図的に大きな音を立てて食器を洗う等…皆さんは自分の“不機嫌な言動”によって相手に“察すること”を強要することはありませんか。または、「いいですよ」と了承しておきながら、相手が自分に背を向けた途端、後ろから大きなため息をつき迷惑がるような風情を醸し出す、或いは、自分に都合の悪い内容になると、「どうせ私のことなんて嫌いなのでしょう!」とか「私のこと馬鹿にしている!」などと話をすり替えて、相手の罪悪感を刺激して自分が優位に立とうとすることはないでしょうか。受動的攻撃は、ハラッサーのみが使うアプローチではなく、私たちが日常的に使っている言動の中にも多く含まれています。しかし、そうした受動的攻撃を繰り返し使い、相手の人格や尊厳を傷つけるとモラハラのリスクが高くなります。

モラルハラスメントのハラッサーに服従する心理については、マリー=フランス・イルゴイエンヌさんはこんなふうに言っています。「モラルハラスメントの目的は、相手を心理的に不安な状態に追い込んで、逆らうことができないようにすることである。そのためには対等な関係ではなく、支配と服従の関係ができていることが望ましい。そうすれば、戦う前に相手はよろいを外しているからである」。また、「人間は一時的な悪意には耐えられるが、その悪意が日常的に、繰り返し示されると持ちこたえることができない」しかも、「その悪意を示す人に対してやり返すことも弁明することもできない状態であれば、最後には病気になってしまう」とも言っています。このように‟服従する心理が発生するのがモラルハラスメントであり、支配され続けた結果“魂が死んでしまう”のです。

 

●モラルハラッサーにならないために

さて、今度は少し角度を変えて考えてみましょう。

「不機嫌は暴力か」という話です。仮に、「不機嫌=(イコール)暴力」と言ってしまったら、被害に遭っている人は、相手にされた理不尽な言動に不機嫌になってもいい状況下で、不機嫌になることができなくなってしまいますね。そのような誤解を招かないために、単純に「不機嫌=(イコール)暴力」と言うつもりはありません。不機嫌な言動が全て「暴力になる」ということではないのです。では、「その不機嫌が暴力にあたるか否か、両者で何が違うのか?」と問われたら、皆さんは何と答えますか。私は「不機嫌な態度をとる自分に“葛藤”が有るか無いか」を一つの基準としてあげたいと思います。モラルハラッサーの多くは、支配や攻撃が目的のため、不機嫌な態度をとることで派生する自責の念と向き合う心理的葛藤を抱く可能性は低く、自分の言動が相手を支配または攻撃しているという自覚がない可能性が高いです。

自身の不機嫌な言動が暴力に当たるかどうか不安な場合、その言動によって相手に理解を求めるだけでなく相手を変えようとしてはいないか、言わなくても察してくれることを相手に期待していないか、相手の意思の確認をしているか、相手への配慮があるか、モラハラに対抗するためにモラハラを使う(ミイラ取りがミイラになる)被害者の心理に陥っていないか等、不機嫌な態度をとる自分自身に対する居心地の悪さのような葛藤をセルフチェックすることを意識できるようになると、モラハラに発展させてしまうリスクを下げることができるかもしれません。

 

●自分を責めてしまう“心のクセ”に気づく

モラハラ被害は人間関係へも影響を及ぼします。今までの自分の価値基準が通用しない相手との関わりがもたらす混乱によって、被害者はモラルハラッサーとだけでなく、それ以外の人との関わりにおいても、自身のコミュニケーション能力を疑うようになります。そして、モラルハラッサーとの日々のやり取りの中で、自責の念や罪悪感を繰り返し刺激されるので「悪いのは自分」と思わされ、何か上手くいかないことがあると「自分を責める」思考のスパイラルに陥りやすくなります。ですから、モラルハラスメントを受けているかもしれないと思ったときは、まず自分を責めることを意識的にやめる必要があります。それだけでもハラスメントによって低下した自尊感情の回復が早くなる可能性があります。

もう一つ大事なことは、「個人」と「問題」を分けることです。世の中にはコントロールできることとできないことがあります。「個人」とは、相手の性格、資質や癖、行動パターン、思考パターンのことですが、これらは本人に変える意思がなければ他人が変えることは非常に難しいものです。しかし、「個人」ではなく、状況や事態や環境等の今起こっている「問題」に着目すると、方法が見つかれば対処や解決の可能性(=自分でコントロールできること)が見出せることがあります。家庭内モラルハラスメントの場合、加害者と物理的に離れること(例えば、スペースを出る、別居する、離婚する等)によって自分が傷つけられない状態をつくることは、ある程度自分でコントロールできるかもしれません。まずは「何とかして相手を変えよう」とする意識から抜け出し「自分を守る」という意識にシフトすることが大切であり、自分ではコントロールできないこと(相手「個人」に関わること)で自分を責めてしまう“心のクセ”に早く気づく必要があるのです。

 

●加害者になるリスクを下げるための“意識化”

それではここからは、自らが加害者にならないために意識しておきたい事柄についてお話していきたいと思います。加害者の言い訳としてよく使われるフレーズ「○○のつもりだった」が一番危険です。具体的には、積極的な“イエス”が返ってこない場合、相手は“ノー”であると解釈し、改めて相手の意思をしっかり確認(イエスなのかノーなのか)することが大事です。というのも、自分より力関係的に下に位置する者に対して積極的な“イエス”を期待するのは、単なる幻想にすぎないからです。立場を入れ替えて考えてみてください。実際、パワーも立場も上位の人に“ノー”を言うことはとても難しいでしょう。「家族なんだから、夫婦なんだから、当たり前に言えるはず」と思うのではなく、もしかしたら相手は「“ノー”と言いにくいかもしれない」ということを前提に物事を考えることができれば、加害者になるリスクは低くなるかもしれません。

まずは「自分の言動の目的は何か」を意識してみてください。自分がしようとしていることはコミュニケーションなのか、コントロール(支配)なのか、それとも嫌み(攻撃)なのか…。自分が日常的にやっていることが「モラルハラスメントに当たるのではないか」と心配であれば、コミュニケーションが目的になっているかに着目すると良いと思います。

もう一つ分かりやすい方法としては、自分のしている言動が初対面の人にもする言動かを考えることです。自分の言動に不安を感じた時は、まず初対面の人が相手だったらどうするかという基準に戻すとより安全です。

 

●被害からの回復は「忘れる」ことでなく、「自分を信じる」ことから

モラハラ被害者の影響について、マリー=フランス・イルゴイエンヌさんはこう言っています。

「モラルハラスメントを受けると、被害者の性別や年齢に関係なく、どの被害者にも共通した症状が現れる。その症状の重さは、モラルハラスメントの程度の激しさや、それが続いた期間の長さに密接に結びついていて、被害者の性格的な傾向にはそれほど関係がない」

つまり、被害を受けた期間の長さが症状の重さに直接関連するということなので、“自分は被害に遭っている”と本人がいかに早く気づくかが重要になります。

被害を受けた人に対して、周囲は、「早く忘れて何か楽しいことを考えたほうがいい」と言いがちですが、実際、人間の脳は不快や不安、危険を感じたことは忘れないようにできています。辛い体験を記憶するからこそ、過去と似たようなモラルハラスメントをする人と出会ったとき、そのことにいち早く気づき、再び“巻き込まれるリスク”を回避できるのです。

私は、被害からの回復を「優先順位が変わるプロセス」と捉えています。モラルハラスメントを受けているときには、とにかくハラッサーのことが一番の優先事項です。しかし、モラルハラスメントの渦中から外れて自分を取り戻してくると、暮らしを守ることや、子供、仕事のことなど、ハラッサーよりも重要なことが自然と上位にのっかっていきます。ハラッサーに囚われる思考の上に他の重要な事、守りたい事が積みあがることで、今まで一番上にあったハラッサーのことが、だんだん下りてくるようなイメージです。しかし、ひとたびハラッサーから連絡があると、突然過去の経験が思い出され、ハラッサーが一番上に上がってくる。これがいわゆるフラッシュバックです。一瞬ハラッサーのことが一番上に戻ってきても、すでにそれよりも大切にしたいものが明確になっている状態では、そこに新しい事柄が積み上がるのも早くなっていくので、自動的にハラッサーの優先順位が下がるのも早くなります。被害からの回復は一直線に右肩上がりに良くなっていくものではなく、こうした上下動を繰り返しながら徐々に回復していく、そんなイメージで捉えられると回復のプロセスとつきあいやすくなります。

加えて私が強調したいのは、「信じる力の回復」です。モラルハラスメントを受けている被害者の多くは、「自分が悪い」と思わされているので自分を信じる力が小さくなっています。また、仮に周囲に助けを求めたとしても、周りは「加害者がおかしい」とは思っていなかったりするため、「あなたの思い過ごしではないか」などと真剣に受け取ってもらえず、結果、周囲の人を信じることも難しい状況に陥ります。また、モラルハラッサーは最初、すごく“いい人”だったりするので、被害者も全面的に信頼してしまいがちです。信頼していた人に裏切られるので被害者は、人を信じるのが怖くなってしまうのです。

もし皆さんの中に被害を受けている方がいるのであれば、回復の第一歩として意識することは、「自分が悪い」と自分を責めるのをやめて、自分の勘(感)を信じることです。“信じる力”が米粒大から豆粒大になるくらいでもいいのです。そういう小さな緩やかな変化、「信じる力の回復」こそがハラスメントからの回復と言えます。そして「何かおかしい…」と感じたら、ご自身の勘を信じてください。それは「自分で自分を守るセンサーが働いている証し」です。

また、あなたのことを心配した周りの人から様々なアドバイスがあるもしれません。しかし、実際には、アドバイス通りに行動したことでかえって、モラルハラスメント状態がエスカレートしてしまったというケースもあります。あなたに心無い言葉を投げかける人もいるかもしれません。ハラスメント被害の渦中にいる間や回復の途上にある時は、周りがどのように自分に対応したかで、“今”自分に本当に必要な人は誰か、また、この先も関わっていきたい人は誰かを篩(ふるい)にかける良い機会でもあるのです。他者のアドバイスに耳を傾けることも一つの判断材料になりますが、最終的に「いつ、何を、どうするか」を自分で判断し、選択することが、その人が持つ力を引き出すという意味でなにより自身の回復につながるということもお伝えしておきたいと思います。

 

●被害者のサポート

最後になりましたが、被害者対応のポイントについて、モラルハラスメント被害者の周りにいる人たちに伝えたいことがあります。誰かをサポートしたいと思ったとき、今すぐには現状の改善は難しい状況にあったとしても、あなたにできることがあります。それは、その人が本当に困ったとき、あなたに「助けて」と言いやすい関係を今築いておくこと、そして、その関係性を保つことです。そして、被害についての相談を受けた際に「この問題は、自分一人では抱え切れない」と感じたら、迷わず専門家の助けを求めるようにしてください。

 

さて、今日はかなりの駆け足で、モラルハラスメントという複雑な話を皆さんと共有させていただきました。ここまで色々話をしてきましたが、大事なことは、2つ。1つはモラルハラスメントを受けるのは「自分の側に問題がある」と、自分を責める材料にしないこと。もう1つは、自分の力・自分の勘を信じるということです。なぜなら、そうすることによって「魂の殺人」ともいわれるモラルハラスメントの被害を最小限に抑えることができるかもしれないからです。 

                                                  以上

 


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