「パートナーシップセミナー」開催レポート(第2回)

平成30年度パートナーシップセミナー

第2回「ふたりで考えるがんばりすぎない家事

こころの負担を軽くする 家事分担術」開催レポート

平成30年11月10日(土)13時30分~16時00分

 

あれもやって、これもやって、ひとりでは抱えきれないタスク…。

こころの負担に押しつぶされそう…

多忙な毎日にあっても、日々の生活を回していくためにどうしても避けられない家事。

ひとりで悩んでいないで、パートナーとふたりで考えてみたらどうでしょう?

ふたりで考えたらこころの負担も軽くなるかもしれません!

“最強のふたり”になるためのお悩み解決セミナー第二回は、佐光紀子さん(翻訳家/ナチュラルライフ研究家)をお迎えしての開催となりました!

 

―家事のし過ぎが日本を滅ぼす?ー

女性向け家事セミナーでは開口一番、「私は掃除が苦手で…」、「実は片付けが下手なんです…」と

おっしゃる女性が結構いるんです、と佐光さん。

なぜ日本では、“女性は掃除が出来ないとダメ!” ”だらしないとダメ!”といった状況になっているのでしょうか。

ある雑誌社から“手抜き家事”について取材を受けた際の様子を例にとって、

佐光さんはわかりやすくお話をして下さいました。

 

例えば、掃除のプロセスで「ここで、机を拭きます」と私が説明するとします。

すると記者さんはメモに「“きちんと”拭く」と書きます。私は「拭く」としか言っていないのに…。

なぜか“きちんと”という言葉が付け加えられるのです。不思議でしょ?

日本のメディアにおいては、「女性は、きちんとしていなければいけない」、「女性は、家事をきちんとできてこそ一人前」というようなメッセージが発信されることが多く、それら刷り込みによって、知らず知らずのうちに女性自身が家事を抱え込んでしまう状況が生み出されているのです。

 

そして、こうした女性側の意識が、パートナーとの家事シェアを阻んでいる大きな要因の一つになっていると佐光さんは分析しています。

 

また、仮にパートナーと家事分担をしたとしても、相手のやり方が気に入らず、つい口出しをしてしまったり、仕上がりにぶつぶつと不満を言ったり、最悪「なんであなたは○○なの?!」と怒り出してしまったりで、…結果パートナーがやる気を失くしてしまう。哀しいかな、よくあるパターンですね。

 

では、実際、上手にパートナーと家事をシェアするためにはどうしたらよいのでしょうか?

グループワークを交えながら、一つひとつ考えていきましょう!

 

 ―相手への“期待”にあるギャップに気づく―

まずは自己紹介も含め、自分の好きな家事について男女それぞれのグループに分かれてグループ内で発表。

次に「私はパートナーにこんなふうに家事シェアをしてもらいたい!」「パートナーはこんな家事シェアを期待しているのではないか?」ということを書き出していきました。

自分が相手にシェアしてもらいたいことと、パートナーがシェアして欲しいと思っていることには結構なズレがあるのではないでしょうか。

参加者が書き出しているものを見てみると、女性は「〇〇の責任を持ってやってほしい」など、態度や気持ちについて思っているところが多いようです。

それに対して男性は「〇〇をする」(〇〇はゴミ出しとか、風呂掃除とか)など、役割をパートナーに期待されていると思っているよう…。

 

例えば、「お米を研いでおいて」と言われたらあなたならどこまでやりますか?

お米を研ぐところまで?炊飯器に水を入れるところまで?それとも炊飯器のスイッチを入れるまで?

もちろん答えは人それぞれだとは思いますが、男性の多くは炊飯器のスイッチを入れることまではしないそうです。

なぜなら依頼されたのは、“お米を研ぐ”こと。

なので、言われたとおり、お米を研ぐところで終わってしまうのです。

一方、女性の多くは炊飯器のスイッチを入れるまでが「お米を研ぐ」という一連の行動だと思っている様子。

このように、相手に対して期待する家事の内容にギャップがあり、相手に期待していたことと、実際にしてくれたことにズレが生じてしまったときに、パートナーとの間で精神的な衝突を生じてしまうことが多いようです。「お米を研いで」ではなく、「ご飯を炊いて」と伝えれば、きっと炊飯器のスイッチまで押してくれるでしょう。

伝える側もどのように言ったら自分の考えていることが正しく伝わるのか、少し考えてみるとよりスムーズに家事をシェアできるのではないでしょうか。

 

 ―家事を任せるとは―

家事をパートナーとシェアすると「私はこういう風にやってほしかったのに…」「そういう手順は効率的じゃない!」と思ってしまうことはありませんか?

そんな風に思うのが嫌で、任せるはずの家事を自分でやってしまい、結果自分の担当が増えていったり、パートナーのやり方に口を出してしまい二人の関係性に暗雲が立ち込めてしまったり…。

皆さんそういう経験があるのではないでしょうか。

佐光さんには『女性の方が“任せる”ということが苦手な人が多い』という印象があるそうです。

「家事を任せるならそのプロセスすべてをパートナーに任せてしまいましょう。最初の1,2回は『そうじゃないのになぁ』と思うこともあるだろうけど、やり方(自分なりの手順)がわかれば、必ず“進歩”していきます」

自分なりにやり方にこだわりのある家事をパートナーに任せるのは、少なからず抵抗があるでしょう。

そこで、考えなければいけないのは、自分がこだわらない家事とは何か、あるいは相手が得意な家事は何か、です。

そして、その家事を相手に全部任せてみてはどうでしょう?

相手に任せて成長するのを待つ(見守る)のは精神的に大変な部分もあるかとは思いますが、そこは手を出したくなるのをぐっとこらえて相手を信頼し、「任せる」ことが大事。

●上手くいかなかったら「しょうがない」

例えば、「ご飯を炊くのはパートナー」と決めたら、ご飯を炊いてもらいましょう。

もしかしたら残業で帰りが遅くなり炊けない日があるかもしれません。あるいは、タイマー設定をしそこなったりご飯炊き担当であることをうっかり忘れてしまうことがあるかもしれません。

けれど、そこで自分がパートナーに代わってご飯を炊くことはせずに、「しょうがないね」とサラッと言うことがとても大事なのです。

●できていなくても責めない

できていないところがあっても「なんでできてないの?」と相手を責めるのではなく、その場は「しょうがないね」と終わらせ、後で(落ち着いてから)「次はここもやってほしいな」と伝えることがポイントです。

●マニュアル化してみる

「私は〇〇を気をつけて掃除をしている」「洗濯物を干すときはここに気をつけて欲しい」など、最初に自分のやり方・手順(マニュアル的なもの)を伝えておけば、パートナーもその部分を気にしてくれるはずです。

●任せた家事は全部(=全ての行程)やってもらう

ゴミ出し例に挙げると、以下のような行程が考えられます。

  1. ゴミ袋をゴミ箱に設置する

  2. ゴミ出しの日を把握する

  3. 該当の日にゴミを出す

  4. ゴミ袋のストックが少なくなった(なくなった)らゴミ袋を買う

あとは相手を全面的に信用して、「任せたよ!お願いね!」と言ってしまいましょう!

―家事は愛情のバロメーター?!―

日本では家事が女性の愛情のバロメーターのようになっています。

例えば、子供が朝ごはんを食べていなかったら、「それは“母親のせい”、愛情が足りないのでは?」

家庭や子供に何か問題があるのは、「母親の問題だ」と決めつけられてしまいがちです。

幼稚園や小学校へ「何かあったら父親に連絡をしてください」と伝えているのに、電話がかかってくるのはなぜか母親の方…。そんな経験ありませんか?

「日本の女性は“子供がきちんとできるように裏で準備をし、面倒を見ることができないとダメ”と、母親として家庭責任を一身に背負い込むようにしつけられている。」

ある海外の社会学研究者の著作の一文に出会ったとき、佐光さんは大変驚いたそうです。

なぜなら、佐光さんもそういうこと(きめ細かな心配りとサポート力の発揮)ができるのが“母親”だと思っていたからです。

「子供が小学校に上がると、(学校にもよると思いますが)先生から電話がかかってくるんです。お子さんが宿題をやってないとか、忘れ物をしたとか。けれど、インターナショナルスクールに勤めている先生に聞くとそういったケースで親には電話しないそうです。『生徒と先生が学習上必要で出した取り決めなので、それを親に監視させるということを期待していない』って言うんです。」

そこで佐光さんが思ったのは、“境界線を引く”というのはパートナーとの間だけではなく、子供に対しても大事だということ。私はここまで責任を持ってしますけど、ここからこの範囲はあなたがやってくださいというように。家族で話し合いながら、役割(責任)分担についてたくさん線を引いていくことで、ひとりで背負う家事の負担は減っていくはずです。

 

―できないことは「できない」と言ってしまう―

「苦手なこと、できないことは『できません』と宣言してしまって、誰か他の家族にやってもらう、というのも“愛” 」と、佐光さんはおっしゃいました。苦手なことを我慢してやることで、相手を恨むようになってしまっては本末転倒、結婚した意味がない?!できないことをお子さんにやってもらうのももちろんOKです。

 

―情報のシェア―

お子さんの学校のこと、習い事のこと、あるいは共有のお金の使い道(家計)など、お互いに把握できているでしょうか?

貯金通帳や健康保険証、診察券、保険の書類などをしまっている場所は情報共有できていますか?

些細なことでも情報をシェアするクセをつけておくと、何かあった時にお互いが補完的に行動することができます。「お菓子はここに置いています」「シャンプーの替えはここにあります」

そんな些細なことからでOKです。情報を共有する、つまりコミュニケーションをとるということが大事なのです。

各家庭での情報共有の方法や実際に情報共有が難しいと感じていることを参加者に聞いてみました。

●冷蔵庫の中のものはガラスの容器に入れて中身が分かるようにしておく

●ポストイットに名前を書いて貼っておく(〇〇の牛乳、〇〇のチョコetc)

●お金の管理の仕方が難しい→共通の口座を作り、そこから引き落としてもらう(光熱費、教育費など)

●タイムツリー(共有カレンダーアプリ)を使用し、お互いのスケジュールや子供の行事などを共有する

参加者の声からもわかるように、情報の視覚化(見える化)がカギのようです。

 

―質疑応答ー

質問者(男性):よくパートナーから「〇〇を今すぐやって」と言われるのですが、やるタイミングは自分で決めたい。タイミングまで指示されるとイライラしてしまう。仕事で疲れて帰ってきているから、

少しくらいソファに座りたいんです。

佐光:「私がやるよ」という意識を持っているということをアピールしてはどうでしょうか。

「これをやったら、〇〇をやるからね」という言葉を添えてみるとか。

女性は「結局、最後は私がやらなきゃいけないんでしょ?!」という意識が強い。妻の依頼に対して

「ちょっとソファくらい座らせてよ」って言ってしまうと、その時点であなたは妻の敵になってしまうんです。だから「大丈夫、私がちゃんとやるよ」っていう姿勢を見せる、つまり「あなたの味方だよ」ということがきちんと相手に伝われば、二人の関係性は変わってくるのではないでしょうか。

 

―参加者の声―

◆佐光さんのお話を聞いて、自分が家事の責任を背負い過ぎてるかもしれないと気付きました。また、自分たちにとって本当に必要な家事を再考してみたいと思いました。

◆「日本の社会」の視点からのお話が大変興味深かった。合理的、かつコミュニケーションを重視しながら、家事分担について考えていきたい。

◆講師や他の参加者からいろいろな情報が入ってきたので非常に勉強になった。

◆男女の家事分担、家事に対する認識のゆがみの原因の一端が分かって良かったです。

◆いろいろな家庭の家事のシェアの仕方やパートナーとの関係性を聞くことができて、とても参考になりました。

(アンケートより一部抜粋)

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