起業女子全力応援交流会              土日クラス第2回・合同交流会開催報告

 平成28年2月13日(土) 13:00~17:00
  当日の流れ
   -「宿題をやってみて」の感想をヒアリング
   -ゲストトーク
   -「小さくても面白い仕事を作ってみよう」ワークショップ
   -未来へ踏み出す決意表明 
   -全体交流会

 起業女子全力応援交流会土日クラス2日目、24名の参加者が集まりました。実はこの日を迎える前に、参加者の皆さんには宿題が課されていました。課題は、「やってみたい事業をとことん自由に描いてみよう」というもの。文章はもちろん、イラストやマップのようなビジュアルを思い思いに活用し、メールで共有。前日までに全員が、全員の夢や構想を把握した状態でクラスに臨みました。

 2日目にして最終回の当日。アイスブレイクも兼ねて、宿題に取り組んでみた感想を数人の方にたずねると-「文章にして想いを形にすると整理ができた」「皆さんの宿題を見るだけでも楽しかった」「自由形式だったのでどう表現するか迷ったが、皆さんの構想もオリジナリティにあふれていて勉強になった」など、最初は大変だと感じても、やってみると楽しかった!具体的になった!という前向きな感想が多く聞かれました。

 そしてゲストトークタイム。土日クラス2日目のテーマは「暮らしと仕事をごちゃまぜにする自由な働き方」。お話いただくのは、暮らしかた冒険家の伊藤菜衣子さんと、Mirai Instituteの小柴美保さんです。

 まずは伊藤さんから、これまでの経緯やビジネスの流れ、価値観や気持ちの変化とそれを大事にしながら暮らすこと、生きることについて話していただきました。

               

 伊藤さんの今の肩書は「暮らしかた冒険家」ですが、これは「ノリ」でつけたそう。本業はカメラマン、学生時代から環境のための広告制作やデザイン事務所のマネジメントなどになどに関わっていたこともあり、そこから派生して情報全体をどう見せ発信していくかトータルで考えているうちに、Webのディレクションからブランディングまで手がけることになったそうです。伊藤さんの夫はプログラマーで、そういう仕事をしている人との結婚もまたこの道へ繋がる大きなきっかけに。今はすっかり制作物の全体を考えるクリエイティブデイレクターとなり、業務の半分以上がその仕事になっています。そしてもう半分は、ただお金を出せばいいという訳でなく、工夫しながらいかに品質の高い暮らしをするかという「高品質低空飛行」について考える、暮らしかた冒険家の業務だそうです。

 “結婚キャンプ”や“ノマド新婚旅行”、熊本への移住と古民家のDIYリノベーションなど、世の中の常識に一石を投じるような様々な活動をしてきた伊藤さん。そんな伊藤さん夫婦のユニークさが世界的ミュージシャン・アーティスト坂本龍一さんの目に留まり、「暮らしかたそのものがアートだ」と評されて、2014年には、札幌国際芸術祭の参加アーティストとして札幌に移住することに。

 伊藤さんは語ります。

-現代はインターネットがあればどこでも仕事ができます。将来が不安だからお金を貯めるのではなく、貧乏になる準備をすればいい。要するに、知恵や、いざとなったときに助けてくれる人脈を貯めるんです。幸せに楽しく暮らすことから逆算すれば、貯金がマストではないはずなんです。地方では、東京に暮らしていたらにわかには信じがたいようなものを持て余している人がいます。都内のオーガニックスーパーだったら1本250円するような大根を、「何本でも、好きなだけ持ってけ!」と言う人がいる。お金って、何とでも交換できるから便利だし、みんな欲しいと思うのでしょうけど、そもそも何かを欲しいと思ったときに、それをお金と交換しようとしなくてもいいのかもしれない。例えば、「その無農薬野菜毎週届けて!Web作るから」と、欲しいモノと自分が持っているスキルや技とを交換すればいいのですよね。

 あとは、もちろん社会が変わればそれが一番いいと思いますが、自分たちの力だけでも、どうにかできるのではないかといつも思っています。例えば、自分が欲しいサービスについて、できないことはできないと言う。すると、「それ私ならできるよ!」という人が現れる。そうしたら自分の得意なことを提供して交換すればいい。「Do it with others」ですよ。-

 続いて小柴さん。「ビジネスはそれ自体がクリエイティブ-つまりどういう職業であっても、自分で仕事を楽しめて、新しい何かを生み出せる。それがクリエイティブということなのではないか」と、ゆったりとした口調で話し始めました。小柴さんは現在、Mirai Instituteという独立系シンクタンクを共同で立ち上げ、その一環として、働く場所「みどり荘」の運営をされています。「みどり荘」とはいわゆるコワーキングスペース。「冬になると緑がなくなって、みどり荘じゃなくなるのですが…」という一言で、会場の雰囲気は一気にリラックス。

               

 小柴さんは語ります。

-みどり荘はそもそもが“廃墟”-かなりの老朽物件でした。高級住宅街の中にあって、きわめて異色な存在だったとも言えます。たまたまデザイナーさんが誰も使っていなかったその物件を見つけてきて…そこに住んでいた大家さんに「ここ貸してくれませんか?」とアプローチ。すべてはそこから始まったのです。

 現在みどり荘の入居者は40人程度で、その85%が日本人です。みどり荘が始まって3年ですが、このコワーキングスペースには外国人も数多く出入りしていて、どう働く?どう生きる?という問いかけに対するサンプルがいっぱい出てきた感じ。多様なバックグラウンドの人たちと一緒にいるようになって、働くこと自体、既成概念にとらわれる必要はないのではと思うようになりました。-

 ここに至る前の小柴さんの経歴はというと、大学卒業後、グローバルな仕事がしたいと外資系投資銀行に就職。キャリアウーマンに憧れる気持ちもあったそうです。ところが-

-2008年、リーマンショックが一つの転機でした。オフィス街をヒールで闊歩する、今でいうバリキャリ的な生き方に大きな疑問符が付きました。「この仕事って何のため?」その頃読んでいたのが働き方研究家の西村佳哲さんの本で、それがとても面白くてネットサーフィンをしていたら、スクーリングパッドにたどり着きました。世の中「どういう生活をしたいか」を基準に仕事をつくっている人と、「この技術をどう使ったら儲かるか」でしか仕事をしない人の差が大きいのではないか、「金融だけやっていても仕方ないのでは…」という思いがふつふつと湧いてくるように。

 そして5年前の東日本大震災。揺れる高層ビルのオフィスで死ぬか生きるかの思いを体験。「死ぬなら、こんな仕事やっていられない!」と思っていたところ、スクーリングパッドの黒崎さんから「じゃ、会社辞めたら?」。その言葉に背中を押されるように転職を決断、今のみどり荘につながったのです。-

 小柴さんは現在、みどり荘のチームで「働くとは何か」を考える本“WE WORK HERE”の出版準備を進めているそうです。クラウドファンディングで印刷費を集めて、ゴールデンウィーク明けに発売予定だとか。どんな本になるかとても楽しみですね!

 お二人からじっくりお話を伺った後は、ファシリテーターの和泉里佳さんとのセッションという形でトークが展開されました。

    

 まず最初は、「ひらめきやアイデアを事業にする そのために必要なことは?」という質問。

 伊藤さんは語ります。

-世の中ではPDCAが当たり前で、儲かるか儲からないかを考えてから、というのが常識なのでしょうが、私はDoが先に来てしまうタイプ。夫婦二人の会社だから、プランよりもまずはDo、作ってしまいますね。世の中に出してみて反応を見ると、誰に響くのかが分かる。その時は反応がなくても、後から問い合わせがあることも。

 また、新しいアイデアのタイミングについては、
-例えば結婚キャンプの企画の時は、プレスリリースも出してみました。その時は反応が少なく3年くらい経ってから、色々なメディアからあのときの写真を貸してくださいと連絡が来ました。面白いことって意外とすぐには受け入れられないのかも。そういう意味では、私たちは思いついてしまうのが少し早すぎるのでしょうね。世の中に受け入れられる3年前くらいに思いついてしまう。1年前に思いつく人がお金持ちになるのでしょうね。

 伊藤さんらしい語り口に、会場からは大きな笑いが起きました。

 小柴さんは、「まず人に話しますね。」と穏やかに話していました。人に話して反応を見る、できる範囲で小さく始めて試してみる。動いてみることに共通のヒントがありそうです。

               

 次の質問は、「こんなことも仕事になる!?」というもの。いろいろな仕事を作ってきたお二人に、珍しい仕事や小さな仕事、一風変わった報酬の話を伺いました。

 伊藤さんは、「野菜やお米とWeb制作の交換」、「Web制作の作業をした日は依頼主のカフェでごはんを食べられるという交換」など、“物技交換”はいろいろやってきたそうです。大切なのはトライ&エラーの精神。切り替えやバランスも重要とのことで、お金をしっかりもらう仕事は、クライアントに対しては、押さえるところはきちんと押さえて納める。逆にお金は0円だけど、好奇心を思う存分満たすことができる仕事もある。“お金をもらってないからこそ”できることもあるという考え方はとても斬新でした。

 小柴さんは、みどり荘のスペース運営以外に、シンクタンクとして、未来への叡智を探求する“Next Wisdom Foundation”の企画運営を担当したり、自宅を外国人旅行者に貸したり、夫の実家である和歌山の農家の“梅のリブランディング”やそのパッケージのデザインをして、ファーマーズマーケットで販売したり。お二人の柔軟な考え方や、そこに至るプロセスそのもの、またコミュニケーションを楽しみながら自ら仕事を作り出している様子に、会場も「自分も何かやってみたい!できそう!」という雰囲気で満たされてきました。

 最後に、“場所”やお店を作りたいという参加者も多いことから、「スペース運営で心がけていることは?」という質問。これに対しては、「“場所貸し”をしないことです」と小柴さんがキッパリ。場所を借りてくれる人を、お客さんとしてではなく、コミュニティを一緒に育む仲間として考え運営しているので、「自分の占有スペースもありますが、全体的にこのスペースを面白く使ってください」というスタンスなのだそうです。料金体系もメンバーシップ制で、同じ業種があまりかぶらないように気を遣ったり、メンバー同士がうまく交流できるよう触媒的に話しかけたりなどを心掛けているとのことでした。

その後は参加者の皆さんから次々に質問が。「お客様にはどうやって出会うの?」「直感ではなく、やはりデータは大事?」など、お二人の魅力に惹きつけられ、もっと聞きたい!たくさん聞きたい!という熱い気持ちが前面に。それに対して、伊藤さんは伊藤さんらしく、小柴さんは小柴さんらしく、一つひとつ心を込めて答えてくださいました。「頼まれたからとにかく一生懸命やった」「面白いと思ったから時間をたくさん使った」「やりたいことがあるならとにかく口に出す!」「見つけてもらう何かは、仕掛けておかなければならない」「お金をもらっていないからこそ実験ができることもある」「最初は直感、でも、続けるにはデータがいる」どれも経験がベースになっているからこその、重みのある、身近な力強いメッセージですね。

 そして後半は「小さくても面白い仕事を作ってみよう」のワークショップ。席を移動し、4人ずつグループを作ってワークを進めます。知恵やリソースを出し合って、小さくても面白い仕事をあれこれ考えてみようというものです。

    

 参加者は、様々な色の付箋を使って「余っているもの」「困っていること」「提供できるスキル」を、どんどん書き出していきます。余っているものや提供できるスキルはリソースとなり、困っていることはニーズとなる。ニーズに対応するためにリソースをどう使うか、または、リソースを集めたらどんなニーズに応えられるか、という発想で、グループごとに事業案を模造紙に書き込んでいきます。

 ワークショップの最後には、その「小さくても面白い仕事」について、それぞれのグループ代表者から発表をしてもらいました。短時間のワークでしたが、かなりのアイデアが出され、皆でそれらを共有することができました。“限られた時間の中で、頭を使って情報を整理し、ひとつ何かのゴールに到達する”という体験の醍醐味を味わってもらえたようです。

               

 いよいよここから参加者の皆さんによる、未来へ踏み出す決意表明。2日間のクラスを終えた時点での、未来への思いと宣言を一人ひとりにしていただきました。「自分はPlanに時間をかけすぎてDoができていない。動いていないと“これ面白いな”といった感度も下がってしまう。あえて考えない一年にしたい。」「会社の中で新規事業を立ち上げたい。」「何かを書き出して人に伝えるということで、棚卸しもできる。ブログを書き始めたい。」「今までできない理由を先に考えていたが、それをやめて、とにかく情報発信と収集!アンテナを立てたい。」「もやもやしていたのがすっきりした。」「やるかやらないかで道が分かれる。」など、皆さんの短い言葉の中に、熱い思いがぎゅっと詰まっていました。未来への道はきっと明るく照らされていますね。

    

 最後に、ゲストのお二人に「あなたにとって働くとは?」の問いを投げかけ、まとめの時間となりました。小柴さんは、「自分の中ではまだちゃんと決まっていないのですが、自分でできることを前向きにやることかな。それはこの世の中で、どれだけ自分の問題意識を変えられるか、ということでもあると思います。」と続けていました。そして伊藤さんは「一生懸命やる。やりたくないことはやらない。それでいて“食っていく”こと。」と簡潔に表現。伊藤さんらしい言い回しがその思いの強さを物語っているようでした。

*平日・土日クラス合同交流会*

 土日クラス2日目終了後は、平日と土日、両方のクラスのメンバー45名、ゲスト7名とスタッフ8名が一同に会し、計60名で合同交流会を行いました。土日クラスの初日のゲストMOMOEの稲垣さんによる、“美しくカラフルで体が喜ぶ軽食”をいただきながらの華やか且つ賑やかな交流会。この交流会のために駆けつけてくださったゲストの方々から皆さんへ様々なメッセージをいただきましたが、その神髄は「アリーナへ出よ」の一言に尽きるかもしれません。「名誉はすべて、実際にアリーナに立つ者にある」というアメリカ大統領セオドア・ルーズベルトの名言を引用し、起業女子全力応援交流会参加者への熱いエールを送ってくださいました。その言葉が、参加者の皆さんの胸にしっかりと刻まれていくのを感じつつ、和気あいあいと盛り上がった交流会も幕を閉じました。

    

 これですべてのクラスが終了です。参加してくださった皆様、ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。皆さんの輝ける未来を、スタッフ一同、心より応援しています。

         

ページトップへ